タバコをやめて半年が経とうとしている。
人はよくいう、何かを得れば何かを失う、と。
じゃあ歳を経て、いろんなものを身につけていった者は、そのいろんなものを身につけながらいろんなものを同時に失っていったのだろうか?
それが歳を経る前から存在し、経験を重ねる前から誰しもが持っていたものだとすれば、それらに名前があるとすれば、それはきっと「純粋」って奴に違いないだろう。
二十代前半の頃、僕は早く歳をとりたかった。未熟で、薄っぺらい、頼りない自分が嫌いだった。よく晴れた平日の昼間に、近所の公園で空白の時間を潰していた。そんな時、公園の生け垣でチッチク鳴いていた二羽のスズメの姿があった。まるで白痴のような僕はその愛らしい姿を少し離れたところでボーッと眺めていた。すると突如上空よりカラスがそのうちの一羽に飛びかかり、ガツガツと音を立てて無残にも丸呑みせんとする勢いで食べ始めた。もう一羽の方はとっくの昔に慌ててパートナーを置いて飛び立っていった。これ以上無いような平和な風景が一瞬にしてかき消されてしまった。僕は自然界の厳しさを目の当たりにして、その場から動けないで静観するしかなかった。
ジョージハリスンが、この世の中に自分のものだと言えるものなんてひとつもないと言ったという話のように、あらゆる存在や価値観は無なのかもしれないし、そうであるならば今現在も僕は20代前半と同じ薄さなのかもしれない。しかし明らかに体重計の針は「お前のウェイトは上がり続けてるぜ豚野郎」と言ってくるし(実際には僕が使用している体重計は液晶なので針はないが)、存在の薄さが同じだとしても、自らの未熟さを嘆くようなことはなくなった。いや、これはなかなか難しい問題で、なくなったのではなく、単純に開き直っているとも言えるし、或いはそんな暇がないだけなのかもしれないし、とりあえず未熟さに関しては何ひとつ解決していないと言っていいだろう。
まあしかし、先述したように、先人たちが口々に言ってきた何かを得れば何かを失う論理からすれば、逆に何かを捨てていけばいくほど、何かを取り戻せるという理屈は成り立つ。現在の僕が例の「純粋」を取り戻すためには、あと何を辞めればいいのだろうか?
あの二羽のスズメの事を、時々思い出す。
逃げ切ったのがオスで、食べられてしまったのがメスだったんだろうか?愛するもののために犠牲になることがあるならば、後悔はないだろうか?誰かを犠牲にしてでも、自分を活かすことを選ぶ方が、生き方としては正しいのだろうか?
正解はない。あるとすればそれは、人それぞれだ。
そしてもっとはっきりと言わせてもらえば、俺はスズメではない。
twitterも拝見させて頂いている、なちょいです。
ストーカーのようですみません。
でもコメントしたくてうずうずするので、入れさせて頂きます。
十夢さんのブログは深いですね。いろいろ考えさせられます。
未熟さは変わらないのに、純粋さは失われる。
歳をとるにつれ、未熟であることは許されないから、なんでも器用にそれらしくこなすことを
身につけるけど、根本は未熟なままなので、悩むし、苦しむこともある日々です。
そして、純粋さは失われていくけど、純粋ではいさせてくれない世界、社会でもあるように思います。
大きくなればなるほど、社会のきまりやルールを守り、社会のしくみに合わせて自分を戒め、
忖度して生きることが必要になるように思います。
とか言いながら、私は結構自由に好きなように生きているので、周りからはどの口が言っているんだ、
という感じかもしれません。。
あと、2017/11/13 イカれポンチ野郎 のブログで、音楽でも今の自分になくて昔の自分にあるものがある
とおっしゃっていましたが、才能のある方特有の、深い悩みだなぁと思いました。
すみません、私は十夢さんの昔の楽曲を聞いたことがないのですが、今、シャキーン!などで耳にする
十夢さんの詩、曲、歌からは、純粋さや優しさも大いに感じるのですが、それもまた考えられ、演出された
純粋さも入っているのかと考えると、そうならざるを得ない世の中を疎ましく感じます。
急に名前を出しますが、くるりやバンプオブチキンの今の楽曲は完成されていて、技術もすごくて、
すばらしい音楽ですが、図鑑とかFLAME VEIN など初期のアルバムの曲には特有の熱やエネルギ―、
歌いたいことを本気でがむしゃらに歌う、というような、別なよさがあるように思います。
才能も、音楽を創作したこともない身で勝手に偉そうなことを言って恐縮ですが、
ミュージシャンの方は大変だなぁ、その中ですばらしい音楽を届けてくれることに感謝しないとだな、
と思います。
なんだかとりとめもなく、長々と失礼いたしました!
余談ですが、なんの才もなく、小学生までしか習っていなかったピアノの技術で
ただひたすらに音をとり、伴奏を考えて電子ピアノで「ぼくはしらない」を弾くのは
最高に楽しいです。
>なちょいさん
コメント、ありがとうございます!
楽しんでもらえて嬉しいです。
なかなかブログに向かう時間がなくて、駄文乱文なんですけども、
なんかツイッターよりは長い文章を書きたくなることがあるんですよね。
ただ、純粋さというものに対しては、歳をとればとるほど、色んな経験を
積めば積むほど、結局増していく気がしています。
こちらこそコメントありがとうございます!!
衝動に駆られ、勢い任せに好き勝手なこと書いちゃって恥ずかしくなっていましたが、優しいお言葉をありがとうごさいます。
純粋さは結局増している…うーん、むずかしい…。けど、まだまだ自分にある純粋さに気付くことはあります。
こんな風に十夢さんとやりとりできることがすごく嬉しくて、幸せです。この環境や十夢さんの優しさにほんとに感謝しています。ブログやツイッターをまた楽しみにしています。またコメントさせてくださいm(__)m